研究内容
がん組織はがん細胞だけでなく、免疫系の細胞や線維芽細胞など様々な間質細胞から構成されています。これらの細胞が、細胞外基質、サイトカイン、増殖因子など液性因子の産生や細胞間接着を介して相互作用することで、がんの増殖や転移が制御されます。また、がんの増殖に伴い血管新生が起きますが、腫瘍中の血管は機能的に脆弱なため、血管からの酸素・栄養の供給が不均一に行われ、がん細胞・間質細胞の機能に影響を与えます。このような、がんを取り巻く様々な環境をがん微小環境と呼びます。
がん生物学部門では、がん微小環境に対するがん細胞、間質細胞の応答メカニズムを明らかにし、がん微小環境制御分子を標的とした新たな治療法の開発を目指して研究を行っています。様々な分野の専門家との共同研究を通じて、がん微小環境制御分子の探索から細胞レベルでの機能解析、遺伝子改変マウスを用いた個体レベルでの解析、臨床検体を用いた解析、阻害剤のスクリーニングまで、幅広く研究を展開しています。また、がん微小環境の制御に関わる分子が、炎症性疾患など他の病気にも関わるかについての研究や、がん組織という複雑系を理解するための研究手法の開発にも取り組んでいます。
現在行っている主な研究テーマは以下の通りです。
- がん微小環境における酸素センシング機構の役割の解明
- がんの薬剤耐性メカニズムの解明
- がん・炎症に関わる新規分子のゲノムワイドスクリーニング
- がん微小環境制御分子を標的とした創薬研究
- 細胞間相互作用の可視化・制御手法の開発
- 多臓器連関を解析するための新たな手法の開発
- 核酸医薬によるがん・炎症制御法の開発
(随時加筆していきます)